スペースモモタロウ
捨てられた惑星

 環境破壊が極限まで進んだ地球は危機に瀕していた。人類は自らの命を育んでくれた地球に深い傷を残したまま、新たなる生存の地を求め宇宙に旅立っていった。そして、銀河の星々に移住した人類は再び繁栄し、かつての故郷地球は、次第に人々の心からも消えていった。


鬼<ガイア>の誕生

死の星と化した地球は、その汚染された大地より知的生命ガイアを生み出した。ガイアは汚染された地球に強大な軍事帝国を築きあげ、地球が復讐するかの如く銀河の星ぼしにその力を及ぼしはじめた。
 ガイアの意識には、かつて美しい星であった頃の地球の記憶が埋め込まれていた。青い海に沈む太陽、緑の大地に咲きほこる花。ガイアはその記憶を実現するため銀河の星々へ侵略を始めた。かつての地球の自然を蘇らすため、汚染された水、空気、土壌を他の星へ運び、豊かな自然を略奪する。今、銀河はガイアの脅威にさらされていた。


惑星アクア・ベイ

ガイアの脅威が及んでいない銀河のはずれの惑星アクアベイ。豊かな水と自然に囲まれたこの星に、一人の少年が住んでいた。名前はモモ、過保護に育てられ多少わがままであるが、何処にでもいる普通の少年である。
 ある日、モモのもとへ一人の男が訪ねてきた。傷だらけになりながら、ガイア帝国の支配網を逃れてきた犬型種族の男、エトキンであった。エトキンは銀河で唯一ガイアを倒すことのできる伝説の剣を捜し求めていた。そしてついに、モモの家にあることをつきとめたのだ。エトキンはモモの前で、古い予言の書を開いた。そこには、恐ろしい姿の鬼に、桃太郎と犬、雉、猿が立ち向かっている姿、見事に鬼を退治し、宝を満載にして凱旋する姿が描かれていた。自分はこの犬の血を受け継いでおり、桃太郎の血を受け継いでいるモモは、ガイアを退治する運命にあると語る。そしてその証拠には、モモのオシリには勇者の印のモモ型のあざがあるはずだという。慌ててお尻を隠すモモ。確かにモモのお尻にはあざがあり、家には家宝としてその剣らしき物が代々受け継がれていた。モモに残りの仲間を捜しガイアを倒すための協力を願う。
l;しかし、憶病物のモモがそんな恐ろしいことを承諾するはずもなく、まして過保護の両親がそれを許すはずもなかった。エトキンは必死に銀河の危機を訴えるが、家族の平和を第一に考える保守的親子には通用しない。一夜の宿は提供するが、朝には出ていくことを約束させられてしまう。
 その夜、モモは写真に涙するエトキンを見かける。ガイア軍に殺された妻と息子の写真であった。人のいいモモは同情から協力を承諾してしまう。ここぞチャンスとばかりに出発まで事を運ぶエトキン。しかし、あきれた事実が発覚する。モモの父親は、新しい宇宙船がほしいがために剣を売ってしまったという。あの剣には銀河の平和が掛かっている…信じられない行動に頭を抱えるエトキン。さらにモモはエトキンの宇宙船をいたずらして壊してしまう。怒るに怒れずエトキンはモモを連れ、伝説の剣を取り戻すため、父親が売ったという骨董品屋に向かう。しかし、時すでに遅く砂漠の商人が買い去った後であった。
 モモとエトキンは安物の宇宙船を手に入れ、砂の惑星デュラスへと向かう。二人の乗る宇宙船の後を、不気味な宇宙船が尾行していく。デュラスにはすでにガイア軍が侵攻している。エトキンの不安はつのる。その時、すでにモモは隙を見て家に逃げ帰ることを考えていた。


砂の惑星デュラス

オンボロ宇宙船はあえなく故障、デュラスの砂漠に不時着。モモの泣き言を聞きながら街まで歩くことになる。銀河一美しいと言われたデュラスの砂漠は、まき散らされた汚染物質に染まり、かつての景観はない。所々に白骨化した砂くじらの死体が横たわっている。その傍らで、死にかけている砂くじらの幼生を発見する。モモは幼生を拾いあげ、きれいな砂まで運び逃がしてやる。
 モモとエトキンは、火を焚き、休息を取る。エトキンはガイア軍の脅威をモモに話して聞かせる。エトキンの故郷ゼフィア星は、ガイア軍の自然資源略奪により生態系は破壊され死の星と化してしまった。住人達は強制労働に従事させられ、自らの手で自分たちを育んでくれた自然を破壊しなければならなかった。抵抗するものは容赦なく処刑された。ゼフィアの住人達は伝説の血を受け継いでいるエトキンに未来を託したのだ。妻と息子の死を悲しむ暇もないまま、エトキンはモモを捜しに旅立ったのだった。
 野宿しているエトキン達の近くで、制圧された街より逃げてきた砂漠の商人の船、サンド・ゲイが被弾し座礁し、あえなくガイア軍に拿捕されてしまった。エトキン達は処刑され掛かっている商人達を助けに向かうが、モモの勝手な行動のため逆に捕まりサンド・ゲイの一室に監禁されてしまう。母の名を呼び泣き叫ぶモモ、これではガイアを倒すどころではない。


予知能力者アロナ

失意の二人の前に現れた一人の少女は、この船に危険が迫っていると告げ、二人と商人達を船外へ導く。脱出に成功した瞬間、サンド・ゲイは巨大な砂くじらの成体にぶつかり炎上してしまう。少女は砂くじらの激突を予知していた。
 少女の名はアロナ。予言者である彼女の祖母は、伝説の勇者を探し出し、自分のところへ連れてくるように彼女に命じた。アロナはモモとエトキンをみつけ、アクア・ベイよりつけていたのだ。エトキンは捜している勇者の一人かと期待するが、風貌も違うしオシリにあざもなかった。しかし、助けてくれたアロナの言葉を信じ同行を承知した。
 助けた商人達が合図を送ると、砂の中よりサンド・ゲイの船団が現れた。ガイア軍侵攻により、自由な交易ができず多大な被害を受けていた砂漠の商人達は、エトキン達のガイア退治に全面協力を申し出る。サンド・ゲイ一隻、それに戦いに必要な物資を提供した。しかし、伝説の剣はすでそこにはなかった。アロナは祖母ならばその行方も解るという。二人はアロナの祖母の待つ惑星ユリウスに向った。


ガイアの爪跡

かつてユリウスは緑美しい木々の星であった。しかし今は見る影もなく、墓標のように立ち並ぶ朽ちた木々に、生物の死骸が累々と横たわる。ガイア軍が地球より持ちこんだ汚染物質が大気に混じり、強い酸の雨を降らせる。有害物質を含んだ雨はユリシスを死の星に変えていった。
 アロナの祖母アイリの体も、汚染物質に蝕まれ瀕死の状態にあった。もしガイアとの戦いで危機に陥った時これを食べるように、とアイリは自分たち一族に受け継がれていたカーボンフリーズされたキビダンゴをモモに渡した。そして、最後の力を振り絞り伝説の剣の行方を占う。空中に浮かんだ四つの球の間に一人の男の顔が浮かぶ。エトキンの顔色が変わった。妻と息子の憎き敵、ガイア軍将校ギニアスであった。ギニアスは惑星タンタスにいるという。モモはガイアのいる地球のことを尋ねる。しかし、アイリは知らない方がいいと言葉を濁す。ガイアは人類に復讐しているのだという。そして、迷いが起こればガイアは倒せない、決して迷ってはいけない、そう言い残し息を引き取った。涙をこらえるアロナ。ガイアを倒すために自分も戦う、同行させてほしいと頼む。新しい仲間を加えエトキンたちはタンタスに向かう。アイリの言葉の意味は、地球にどんな秘密が隠されているのか、モモに答えが出せるはずもなかった。確かなことは、ガイアにまた一つ星が滅ぼされたということであった。


新たなる勇者

ギニアスの名を耳にしていらつくエトキン。モモに勇者としての自覚を求める。精神的重圧のなかでモモはますます卑屈になり、エトキンとのいざこざが続く。とても伝説の勇者とは思えない子供じみた言い争い。二人に自分の運命を託さなければならないアロナは、祖母の予言に疑問を抱き始める。
 突然の襲撃。戦乱に乗じて輸送船を襲う宇宙海賊であった。奇声を上げながらサンド・ゲイに侵入する宇宙海賊ザルドと子分のロボット十四号。エトキンはその風貌に驚く。その姿はまさしく猿。捜している勇者の家来そのものであった。しかし、話す暇もなく打ち合いが始まってしまう。交戦の最中、船体後部で爆発が起こる。十四号のザルドを呼ぶ声が艦内に響く。駆けつけるザルド。モモがいないことに気がつくエトキン。嫌な予感が走る、恐る恐る様子を見に行くと爆発したのはザルドの海賊船だった。茫然と見上げているザルド。真っ黒になって泣きそうな顔をしているモモ。混乱に紛れて家に逃げ帰ろうとザルドの海賊船に乗り込んだが、誤操作で爆発させてしまったのだ。
 がっくりとへたり込むザルド。海賊家業で稼いだ金をすべてつぎ込んだ自慢の海賊船が燃え上がっている。泣きながら言い訳するモモ。おかげで話をする機会を得たエトキン。予言の書を広げザルドにすべてを話す。ガイアと戦うなんて命を捨てるようなもの、自分は勇者なんかじゃないと断わるザルド。しかし、子分の十四号が、ザルドのオシリには、モモ型のあざがあることをばらしてしまう。宇宙船は鉄くずになってしまったし、ここは仲間になったふりをして、伝説の剣と鬼の宝を横取りしようと持ち出す。単純なザルドは、悪知恵の働く十四号にすぐ乗せられてしまう。ザルドはエトキンの申し出を受け入れる。ザルドの悪だくみも知らずに喜ぶエトキン。サンド・ゲイはギニアスの後を追い惑星タンタスへ向かう。


氷の惑星タンタス

タンタスは氷の星。厚い雲が地表を覆い、ブリザ−ドが吹き荒れている。サンド・ゲイはガイア軍の警戒網にかかり、思いのほか早く発見されてしまう。戦闘艇との交戦が始まる。輸送船であるサンド・ゲイの反撃もむなしくあえなく飛弾、雪雲の海へ沈んでいく。
 大破したサンド・ゲイに容赦なくブリザ−ドは吹きつける。しだいに艦内の温度は氷点下に下がっていく。このままでは凍死してしまう、ブリザ−ドの切れ間をみはからい民家を捜しに雪原を歩き出す。しかし、再び激しいブリザ−ドが。凍死寸前の彼等に何かが近づいてくるとアロナが予知する。たとえガイア軍であってももう逃げることもできない。雪原に倒れ込む彼等の前に現れたのは、長い毛を持つ巨大な犬、スノ−ハウンドであった。背中の毛の中から顔を出した老人は、瀕死のエトキン達を乗せ、自分の家に連れていく。
 老人の名はエレク、四人の家族と幸せに暮らしていた。しかし、ガイア軍の侵略により平和な時は終わりを告げた。秩序は乱され、抵抗するものは容赦なく処刑された。残された者達は、平和を取り戻すためレジスタンスとして戦いの準備を進めていた。孫娘ミクの父親もその一人であったが、ガイア軍のレジスタンス摘発により捕らえられてしまっていた。レジスタンスは決起の時を待っていた。そこに現れたエトキン達。目的は同じ。共同戦線を張ることにする。
 三日後、年に一度最大のブリザ−ドの日がくる。この日、タンタスの気温は最低となる。基地の空調を破壊し暖房を止める。ブリザ−ドは暖房の切れた基地内を数時間で氷点下に下げる。寒さに弱い鬼達の動きを封じ、奇襲をかける作戦である。エトキン達は、その日までエノクの家に滞在することになる。
 エノクは貧しいながらも精一杯彼等をもてなす。モモは久しぶりの家庭の雰囲気に浸り、ミクの母親に甘える。同世代のミクともすぐにうちとけ楽しい時間を過ごす。エトキンはモモに里心が出るのではないかと気を揉むが、今回のモモはちょっと違っていた。父親の安否を気ずかい涙するミクの姿にモモは心を痛める。もし自分の両親がガイア軍に、考えただけでも恐ろしいことであった。理由はそれだけではなく、モモはミクに淡い恋心を抱き始めていた。
 決行の日、心配するエトキンを尻目に、張り切って準備をするモモ。不思議に思うエトキンの擬問はすぐに解けた。父親は自分が必ず助けると告げるモモ。ミクは首から下げていたペンダントの御守りを手渡す。スノ−ハウンドの上から冷やかすザルドと十四号。自分がいくら言っても聞かないモモがミクのために戦おうとは…恋のパワーに驚くエトキンであった。
 しだいに強くなるブリザード。レジスタンスとエトキン達はガイア軍基地に向かってスノ−ハウンドを走らせる。


レジスタンス救出作戦

基地内の一室、デュラスより持ち帰った剣をしげしげと眺めているギニアス。剣のパワーに恐怖を感じている。ギニアスは部屋の温度が下がっているのに気がつく。部下から何者かに空調設備が破壊されたという連絡が入る。ギニアスは剣を机の上に置き、指令室に向かう。基地内に爆発がくり返される。破壊された壁からブリザ−ドが吹き込み、氷点下に下がった基地内でガイア兵とレジスタンスとの交戦が始まる。
 寒さのため、運動能力の低下した鬼達は劣勢に陥る。脱出に向かうギニアスを見つけ呼び止めるエトキン。振り向いたギニアスに憎しみのこもった銃弾を打ち込む。床に倒れ込むギニアス。作戦は成功したかに思われた。しかしその時、倒れたギニアスの体が紅潮する。しだいに恐ろしい怪物に姿を変え、レジスタンス達に襲いかかる。ミクに大きな口を叩いたモモだが、案の定逃げ回り物陰で涙ぐんでいる。変身したギニアスには銃も通じない。ミクの父親ラウルがギニアスに捕まってしまう。じわじわラウルを絞め殺そうとするギニアス。
 モモは隙を見て、スノ−ハウンドの背中にもぐり込み一人逃げ出そうとする。しかしスノ−ハウンドは動こうとしない。じっと、悲しそうな目でモモを見つめる。涙するミクの顔が頭に浮かぶ。自分のことはほっといて逃げろと叫ぶラウル。立ちつくすエトキンの目にモモの姿が映った。背後の像に登り、ギニアスの頭めがけ飛びかかるモモ。ギニアスはラウルを放し、その標的をモモに変える。逃げろ、と叫ぶエトキン。しかし、恐怖で体が動かないモモ。鋭い爪がモモを襲う。身を捨てて、モモを助けるエトキンの体を、ギニアスの鋭い爪がえぐる。傷ついて倒れるエトキン。その顔をギニアスは覚えていた。家族と同じように引き裂いてやる、とエトキンに襲いかかる。


キビダンゴの力

瀕死の状態で倒れ込むエトキン。怪物化したギニアスになす術がない。モモは、危機に陥ったときこれを食べるようにとアイリがくれたキビダンゴのことを思い出す。カーボンフリーズを解凍し、祈る気持ちでエトキンに食べさせた。その時、ザルドのモモを呼ぶ声が響く。ザルドは取り戻した伝説の剣をモモに投げ渡たす。ザルドは剣を持ち逃げしようと考えたが、憶病者のモモが勇気を振り絞っているのを見過ごせなかった。受け取ったモモは剣を抜き、襲いかかるギニアスに切りかかった。緊張が走る。しかし、剣はポッキリ折れてしまった。目を疑うモモ。それ見たことかと十四号。絶体絶命。その時、エトキンの体に異変が起こる。体じゅうの毛は逆立ち、恐ろしい獣の姿に変わっていく。ギニアスと変身したエトキンとの壮絶な死闘。驚きで声も出ないモモ。格闘の末、エトキンはギニアスの角を折る。悲鳴を上げるギニアス。そして、その体は崩れ去っていく。
 勝利に喜び、エトキンに駆け寄るレジスタンス。しかし、エトキンはあり余る力を押さえ切れず暴れ回る。基地を破壊し尽くし力つき倒れ、その姿は元に戻る。気がついたエトキンは何も覚えていない。キビダンゴにはすさまじい力が隠されていた。
 モモはギニアスが消え去る間際言った言葉が気になっていた。
「ガイアと戦うことは、お前たち人類の進化と繁栄を否定することになる愚かな行為だ…」
そう言い残し、笑いながら消えていったのだった。
 その時、ガイア帝国より通信が入る。基地の異常に気づかれたら援軍がきてしまう、しかし、問いかけられるコ−ドナンバ−を答えられるはずもない。その時マイクに向かって交信を始める十四号。ギニアスの声色を遣い、見事に応答し異常のないことを伝える。ほっと胸をなでおろすエトキン。しかし、それもつかの間、十四号の交信で不幸な事実が判明する。アクア・ベイにガイア軍が侵攻し始めたのだ。エトキンは十四号に、その事実を誰にも話さないように口止めをする。


モモの決断

スノ−ハウンドはラウルとエトキン達を乗せミクの家へ向かう。喜ぶミク。もう会えないと思っていたラウルが無事戻ってきた。ミクはモモに心から感謝し、家族は小さな勇者を讃える。久しぶりの楽しい宴が始まった。しかし、モモの顔は浮かない。伝説の剣は折ってしまうし、怖くて逃げ出そうとした…自分は勇者何かじゃない、とアロナに話す。アロナは、嬉しそうに笑顔を見せるミクを指さし、モモは勇者だと語る。モモがあの笑顔を取り戻したのだと。そして、スノ−ハウンドはその言葉に納得したかのようにモモの顔をぺろりとなめる。
 ガイア軍基地でエトキンは十四号の力を借りて情報を仕入れる。ガイア帝国ではタンタスからの輸送船の到着を待っていた。地球へ侵入するには絶好のチャンスである。しかし、あと一人の勇者は見つかっておらず、伝説の剣は折れてしまった。そしてアクア・ベイのことをモモが知ったら…悩むエトキン。ガイア軍は既に銀河を制圧しかかっている、迷っている時間はなかった。
 しかし、ザルドは同行を拒否する。伝説の剣は折れてしまったし、ガイアと戦うつもりは初めからない。船を修理し海賊家業に戻るという。エトキンの説得もむなしく決意は変わらない。仕方なく三人で出かけることになる。剣は折れ、勇者も揃わずガイアの本拠地、地球に乗りこまなければならない。無謀な戦いだが、自分の星の悲劇を二度とくり返させてはいけない、エトキンの思いは強かった。
 恐れていた事が起こる。モモがアクア・ベイのことを知ってしまったのだ。イカレロボットの十四号に口止めなどできるはずもなかった。父と母のもとにガイアが…アロナの故郷ユリシスの姿が頭によぎる。アクア・ベイもまた無残に滅ぼされてしまうのか。モモの目に涙が浮かぶ。今すぐ帰りたい衝動にかられるモモ。言葉を探すエトキン。しかしモモの口から出た言葉は、ガイアと戦う決意だった。驚くエトキン、あのモモが、こんなに強くなるとは。ガイアと戦う前に死なれちゃこまる、自分の命は自分で守れ、とザルドはモモに愛用の銃を渡す。ザルドなりの精一杯の友情の表現であった。ミクに別れを告げガイア軍の輸送船に乗りこむエトキン達。十四号が最短コ−スをインプットした。輸送船は一路地球へと向う。


無法地帯ボタリア

海賊船を宇宙ドックに入れ、久しぶりにホテルでくつろぐザルド。十四号にモモたちのル−トを聞いて驚く。ガイア軍をも恐れない荒くれ海賊たちの溜り場、宇宙都市ボタリアを通過しなければならない。ガイア軍の輸送船で空域に入れば確実に襲われるだろう。ザルドもあまり近づきたくないエリアであった。交信するが応答がない。既に海賊たちの餌食になってしまったのか。もう関係ないと割り切ろうとするがお尻のあざがうずいて仕方がない。十四号は反対するが、船が直り次第救出に向かうことを決意する。
 カジノや酒場が乱立し、毒々しいネオンが危ない雰囲気をかもしだす。ボタリアに足を踏み入れるや否や悪質な客引きに引っかかってしまう。輸送船に近づき爆薬をしかけ船体を破損させ、修理を強制し店に引きこむ。エトキンたちは修理が終わるまで酒場で待つことになる。
 いかがわしい店内、荒くれ共の視線がエトキンたちに集まる。ガイア軍の輸送船で乗りつけた噂が広まっている。騒ぎを起こさず立ち去りたいと考えていたが、そうもいかなくなってしまった。ザルドの銃が原因で、いざこざが起こる。ザルドはボタリアでろくな事をしていないようであった。
 店の用心棒がモモを捕まえる。ザルドはこの店の支払いをかなり踏み倒していた。エトキンは伝説の勇者であるモモを傷つけるなと叫ぶが、そんなことが通用する相手ではない。ますます、からかいの対象になってしまう。店内で起こる乱闘騒ぎ、どさくさに紛れ逃げ出すが輸送船の姿はない。エトキンは叩きのめされ気を失いない、モモとアロナは連れ去られる。


最後の勇者

酒場の地下にある闘技場。メインイベントに沸き上がる客達。闘技場の中央には泣きそうな顔をしたモモが立っていた。目の前には恐ろしい怪獣ジャグバが立っている。モモは酒場のショーに駆り出され、アロナは女好きの支配人ギルダに気に入られ口説かれている。用心棒が張り付き動きが取れない。
 ジャグバがモモに襲いかかる。逃げ回るモモ。このままではやられる! 自分の命は自分で守れ、ザルドの言葉が頭によぎる。折れた剣を引き抜くモモ、観客に笑いが起こる。果敢に立ち向かうモモ、何回も危機に陥りながらも必死で戦う。観客はいつの間にかモモに声援を送るようになる。力の差は歴然。ジャグバの爪に傷つき倒れるモモ。ギルダはとどめを刺せと声をかける。アロナは隙を見てギルダに短剣を突きつけ、ジャグバを止めるように叫ぶ。しかし、用心棒に阻止され、闘技場に投げ入れられる。モモを今死なせるわけにはいかない! 自らジャグバに立ち向かうアロナ。瀕死のモモは体が動かない。ジャグバの一撃がアロナを襲う。致命傷にあえぎながらも、モモに逃げるように叫ぶ。
 エトキンが駆けつけた時はもう既に遅かった。闘技場は血に染まり、倒れこむアロナ、そして瀕死のモモ。自分がついていながら何でこんな事に。がっくり膝を落とすエトキンの目に、ふらふらになりながら立ち上がるモモの姿が映る。モモは。あきらめていなかった。モモに怒りが沸き上がる。折れた伝説の剣が光の剣に変わる。ジャグバにモモの怒りの一撃。恐ろしい破壊力、一瞬でジャグバは塵と化す。驚くエトキン、これが伝説の剣の力なのか。
 モモはアロナに、最後の望みをかけてキビダンゴを食べさせる。勇者ではないアロナには効果がない。モモに頑張って、と言い残し息を引き取る。場内に沸き上がるモモコ−ル。気に入らないギルダは、残っているジャグバをすべて出せと命じる。エトキンは阻止しようと飛びかかる。用心棒との格闘。輸送船を取り戻してきたザルドが助太刀に入る。身の危険を感じ、逃げようとするギルダを一人の海賊が捕まえる。ザルドの知り合いガントスとその一味であった。用心棒達を次々に殴り倒していく。闘技場に四匹のジャグバが放されてしまった。なぜか、今度は剣が光らない。モモには戦う力が残っていない。ジャグバは容赦なく傷ついたモモに襲いかかる。その時、死んだはずのアロナの背中が淡く光を放ち、白く美しい翼が広がっていく。そして、その翼を一振り、危機一髪モモを空中へ連れ去る。一瞬静まり返った場内に大歓声が沸き上がる。
 最後の勇者はアロナだった。キビダンゴの力でアロナは勇者として生まれ変わったのだ。ガントスに場内に投げ入れられるギルダ。悲鳴を上げながらジャグバに追いかけられている。モモと抱き合いながら喜ぶエトキン、そしてモモはすっかり荒くれ達の心をつかんでしまった。人に心を開かない海賊達の喜ぶ姿に驚くザルド。照れ臭そうにモモに握手を求める。ばらばらになりかけた、四人の勇者がやっと一つになったのだった。
 ザルドが伝説の勇者だと聞き大笑いするガントス。ガントスはいままで行った星の話をモモにする。しかし、銀河を股にかける海賊達も地球には行った事がなかった。知っていることは、地球は汚染のひどい銀河の危険区域にある滅びた星という事であった。エトキンは、ザルドがガントスと隠れて打合せをしている姿を目にする。勇者とはいえザルドは海賊だ、何か悪巧みを。しかしエトキンはザルドを信じることにした。ザルドはここに戻ってきたのだから。
 荒くれたちに見送られ、輸送船は一路地球へ向かう。アイリの言ったガイアの復讐とは、そしてギニアスの言い残した言葉の意味は、地球と人類にどういう関係があるのか、モモは珍しく考えていた。


再生された地球

漆黒の闇の中に姿を現した地球。その姿の美しさに驚く。このエリアにこんなに美しい星があったとは。あの美しさは、銀河の星々から略奪した自然で創られている、多くの銀河の命があの星のために消えていった、とエトキンは語る。しかしモモは、奇妙な懐かしさを感じていた。初めて訪れたこの星、しかも故郷をも侵略している星である。自分の感情に戸惑いを覚えるモモであった。
 ガイアは、城の窓から自分が蘇らせた大地を眺めていた。地平線に沈む夕日、蘇った森の木々、かつて、宇宙のオアシスと呼ばれた地球の姿であった。過去の地球が蘇ったのだ。陶酔するガイアに侵入者があると連絡が入る。モニタ−に映る姿を見て、伝説の勇者であることを直感する。ガイアは殺さずに連れてくるように命ずる。ワナにはまり閉じ込められてしまった勇者達は、ガイアの元に連れられていく。待ち受けていたのはガイアとの最後の晩餐であった。
 テ−ブルに並べられた豪勢な料理、そしてガイアとの対面。戸惑う勇者達をテ−ブルにつかせるガイア、奇妙な晩餐会が始まる。そこにはゼフィア星の特産物、ユリシスの懐かしい穀物、銀河の星々より略奪した種であった。再生した地球の美しさを自慢するガイア。怒りをあらわにするエトキン。そのためにどれだけの生命が消えていったことか。エトキンとザルドの銃がガイアを捉えるらえた。慌てるガイア兵達、しかしガイアには通用しない。ガイアの指先から放たれた稲妻が二人に襲いかかる。倒れるエトキンとザルド。ガイア兵に投獄を命じ、部屋を出ていくガイア。
 モモは、ガイアは復讐している、とアイリの言った言葉の意味を問う。地球は君たちの故郷だ、とガイアは言う。急に頭を押さえ膝を落とすモモ。モモの頭の中に、強烈なイメ−ジが飛び込んでくる。在りし日の地球の姿であった。人類の繁栄にしたがいその姿を変えていく地球。人類の誕生、文明の成熟、産業革命、戦争、環境破壊、そして死する地球。アイリの言葉、ギニアスの捨てぜりふの意味、地球に馳せる郷愁、今その疑問の答えが出た。モモの顔が青ざめていく。地球は、自分たち人類の故郷だったのだ。そして、その生命を育んでくれた地球を滅ぼしてしまったのもまた人類であった。
 牢獄の中、重苦しい空気が流れる。精神的葛藤が起こるモモ。アイリの言葉どおり、全てを知ってしまった今、モモに大きな迷いが生まれてしまった。エトキンは伝説の剣の力が、モモの怒りからくるものだと感づいていた。今ガイアを倒さなければ銀河は滅びてしまう、迷うな、とエトキンは言う。しかし、モモの心境は複雑だった。
 脱出の努力をくり返すが、無なしく時間が過ぎるばかり。重い鉄の扉の覗き窓から誰かが覗いている。次の瞬間、扉が開くと、一体のロボットの姿がそこにあった。声を上げ、ロボットのくせに涙を流し出す十四号。生き別れになった兄弟の十一号がそこに立っていた。十一号はガイア軍に連れ去られ、城の清掃用ロボットとしてこき使われていた。後の十二人の兄弟はスクラップにされていた。牢獄を脱出したエトキン達はガイアのいる王の間を目ざす。


最後の決戦

玉座でくつろぐガイアは、勇者が逃げた知らせに城内にクナプスを放すように命ずる。クナプスの名を聞き戸惑うガイア兵。全てが死に絶えた地球で唯一しぶとく生き抜いてきた生物。ガイアのお気に入りであるが、一度放されれば敵味方の区別なくひたすら食い殺していく恐ろしい生き物であった。
 次々と襲いかかるクナプスに手を焼く勇者達。アロナにモモを玉座に運ぶように告げるエトキン。羽を拡げ、モモを抱え飛び立つアロナ。
 ついに王の間でモモタロウと鬼の対決が再現される。折れた剣をかまえるモモ、しかし剣は輝かない。迷いが怒りを抑えている。迷わないでと叫ぶアロナ。ゼフィアもユリシスもモモの故郷アクア・ベイもガイアに滅ぼされたのだと。ガイアの一撃がアロナを襲う。倒れ込むアロナの姿に、母の姿が重なる。剣が光を放ち出す。泣きながらがむしゃらに剣を振り回しガイアに向かうモモ。そんなものでは自分は倒せない、と体を開き攻撃を誘う。一撃がガイアの胸に突き刺さる。苦痛の叫びをあげガイアの体は紅潮する。そしてより狂暴に変身していく。
 胸に剣を刺したままガイアはモモに襲いかかる。泣きながら逃げ惑うモモ、もう戦う術もない。王の間を飛び出し回廊へ、ただただ逃げ回る。駆けつけたエトキンは倒れているアロナを抱き起こす。気がついたアロナに予知が走る。エトキン達に早く城から離れるように告げ、モモの姿を捜す。窓から、塔の屋根に追い詰められたモモの姿が目に入る。後のないモモ、ガイアは引き抜いた剣を高く掲げ振り下ろそうとしたとき、そこから飛び降りろと、アロナの叫びが耳に入る。選択肢はなかった。勇気を振り絞り飛び降りた瞬間、濁った空より鋭い稲妻がガイアにつき刺さった。悲痛の叫びをあげるガイア。落下していくモモをアロナがキャッチした。
 業火に包まれながら、人類が存在する限り何度でも蘇るであろう、と叫ぶガイア。大地が動き出す、早く脱出しなければ、とエトキン達を貨物ポ−トへ急がせる。振り向くモモの目に映るガイアの最後。大地に響き渡る叫び声。城は崩れ始め、大地は全てを飲みこみ始める。逃げ惑うガイア兵も塵と化し大地に戻っていく。


故郷からの帰還

地球はなぜガイアを滅ぼしたのだろうか。人類に今一度チャンスを与えたのだろうか。それとも、その罪に、重い十字架を背負わせたのだろうか。青く美しかった地球は、次第に濁っていく。モモ達を乗せた船はアクア・ベイに急ぐ。 
 地球より帰ってきたモモを出迎える両親。泣きながら抱きつくモモ、しかし、このひどい戦火の中、無事でいられたことが不思議であった。落ち着いたモモが辺りに目をやると、そこにはガントスと荒くれ達、ラウルとタンタスのレジスタンス達、そしてミクの姿があった。
 ザルドはボタリアでアクア・ベイの事を頼んだのだ。海賊達とレジスタンスの援護のおかげでモモの村は救われたのだった。
 みんなの笑顔を見て緊張の解けたモモは眠りに落ちてしまう。幼いモモには苛酷な戦いであった。久しぶりのベッドで眠るモモをよそに、勇者を讃える宴が夜中まで続いた。


未来への旅立ち

別れの朝がきた。故郷を失ったエトキンは、アクア・ベイで一緒に暮らそうというモモの誘いを断り、二度と同じ過ちをくり返さぬよう、地球のことを銀河の星々に伝え回る旅に出るという。アロナは占いに従いユリシスに戻る事にした。ザルドは地球で再会した十四号の兄弟達と、ロボットレンタルのビジネスを始めるという。ザルドの後ろには、スクラップ置き場から持ちかえった十二個の兄弟達の頭が賑やかに語り合っていた。体をつければ十四人兄弟が揃うとあって、十四号はロボットのくせに満面の笑を浮かべていた。もう再び集まることがなければいいが、とエトキンは話す。そしてみんなは、それぞれの未来に向かい旅立っていった。
 人類が再び道を誤れば、またガイアは復活するであろう。そして地球は二度とチャンスを与えないだろう。モモは、いつかまた地球に行こうと決心した。自分たちの故郷を忘れないために、そして再び過ちをくり返さないために…

おわり


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